空気と換気のコラム
2014/11/26 1.空気がきれいなのは内・外どっち?

30数年前に世界を放浪しました。開発が進まずに昔の生活が残っている小さな村では、朝に夕に、家々の竈(かまど)から薪を燃やす煙が一斉に立ち上がって、町中が煙りました。薪を燃やしての調理は自然で健康的なイメージですが、煙っている空気は息苦しいものでした。

日本の古民家で、家族が生活する様子がTVで映し出されました。そこには現代人が忘れた人間らしい生活があって眩しく思いました。でも、囲炉裏の火から煙が昇って、子どもは涙を浮かべながら、目を盛んにこすっていました。

欧州で森が消滅したのは煉瓦をつくるための燃料として木材が使われたからといわれます。イギリスのニューキャッスルでは石炭を使うことが早くから行われ、今になれば先進的なことだったと褒める処ですが、当時は「あの町では、黒い石のようなものを燃やして、顔を真っ黒にさせている」と笑われたのだそうです。

空気が汚くても当たり前

私がまだ小さい頃、TVで旧両国国技館で行われる相撲中継をみていたところ、「本日から館内に換気扇が取り付けられました」という解説がありました。なんのこと?と思っていると、いつもタバコの煙で霧が掛かっていた館内が、少し透明になったような気がしました。当時は大人の男は誰もがタバコを吸い、なのに換気扇すらなかったのです。

外の空気は汚いはずが…

拙宅は牛込柳町交差点の近くにあります。年配の人なら「あの公害の?」と思い出すことでしょう。牛込柳町交差点は落ち込んだ谷間にあるために空気が淀みます。

昭和45年、健康診断で交差点付近の住民の多くに鉛中毒の疑いがあることがわかり、大々的に報道されました。車の排気ガスが付近の住民の体を鉛漬けしていたのです。以来、交差点の手前(上部)にも信号機を設けて(写真1)、斜面に車が留まらないようにする対策がとられました。

 


写1
写1 .写真・牛込柳町交差点
牛込柳町交差点。谷間の交差点に加えて、
手前(坂の上)にも信号機がある

 

同じ年の夏、今度は杉並区の高校で運動中の女生徒達が目がチカチカすると訴えて、光化学スモッグによるものと報道されて大騒ぎになりました。以来、交差点や工事現場に「空気環境測定器」が置かれることになりました。外の空気が汚れている時代でした。

ところがある日、空気環境測定器の数値が異常に高いことに気づいて・・「なぜだ?」と調査がはじまりました。するとセンサーが外ではなく家の中に入っていることがわかりました。「まさか、外より室内の空気の方が汚いのか」ということになって、家の中に換気扇が設置されることになりました。

シックハウス

公害も収まり、喫煙も減り、換気扇が設置されるようになって、外も内も空気汚染の不安は薄れましたが、今度は室内にある建材や家具、日用品から放散する化学物質がアレルギー症状を誘発していることがわかって衝撃が走りました。これが「化学物質過敏症」で、そんな家をシックハウスと呼ぶことになりました。政府は2003年に、いわゆるシックハウス法(図1)を発令して、建材の規制と機械換気の設置を義務づけました。その後の調査で規制対象になったホルムアルデヒド濃度は低下していることが確認されました。

 


図1
図1-1 シックハウス法
シックハウス法(2003年)

 

こうして公害も室内空気汚染も落ち着いたと思ったのですが、そんなわれわれに襲いかかってきたのが、はるか遠くの大陸から飛んでくるPM2.5。この微少粒子状物質がわれわれの体を蝕もうとしています。換気の原則は外の空気が室内よりきれいなこと・・・外の空気が汚れていたのでは換気は役に立たないどころか、汚れを取り込む装置となってしまいます。(つづく)

 

 

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■南雄三先生コラム一覧

1.空気がきれいなのは内・外どっち?

2.換気の目的と気密

3.計画換気の原則

4.必要な気密性

5.必要な換気量

6.換気はメンテが命

 

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