Column
空気と換気のコラム

安達 修一 先生(ウイルスと健康のおはなし)

2.空気で運ばれる病原体

2020/08/27

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感染症の種類

 
人類にとっての脅威度で感染症を分けると日本の感染症法では1類感染症とされている7つの感染症があります。
それらのうちウイルス性出血熱は、ラッサ熱やエボラ出血熱など5つですが、いわゆる新興感染症としてアフリカなどを中心に強い感染力と高い致死率で知られるようになった、いわば新顔です。
 
しかし、ペスト、天然痘(痘瘡)は、人類にとって度々、猛威をふるってきたことが記録されています。
そして、この2つの感染症は、病原体が空気で運ばれることで多くの人に感染し拡がったのです。
 


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コレラも恐ろしい感染症ですが、3類感染症です。

2類感染症には、結核、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、ジフテリア、ポリオ(急性灰白髄炎)、鳥インフルエンザがあり、飛沫感染など空気を介して感染するものです。
 
感染症法の類型は、感染力と重篤度を総合的に判断していますので、いわゆる怖い伝染病の代表である狂犬病(致死率100%)は4類感染症、エイズ(後天性免疫不全症候群)も恐ろしいですが5類感染症に分類されています。
 
このように、空気が病原体を運ぶ飛沫感染などを起こす感染症が人類にとっては、脅威レベルが高いということです。
 

ペスト、天然痘の流行

 
とくに中世のペスト感染では、世界人口の2割(1億人)が死亡したと伝えられています。
ペストはペスト菌が原因ですが、人への感染は、最初、保菌しているノミ(蚤)が噛みついて感染することから始まり、噛まれた箇所に近いリンパ腺が腫れます。
これを腺ペストと言いますが、その後、ペスト菌は全身に広がり、ついに肺に達すると炎症を起こした肺からの咳、痰などとして病原体を排出するようになるのです。これを肺ペストと言います。
ノミだけで感染するのであれば大流行にはなりにくいのですが、肺ペストになると一度に多くの人に病原体をまいてしまい、いわゆる感染爆発状態になるため、多くの犠牲者を生んでしまったのでしょう。
 
天然痘もペストと同じように、流行を繰り返し、多数の死亡者をもたらしたことが明らかにされています。
病原体の存在を知らなかった訳ですから、ペストでは皮下出血のために全身黒くなって命を落とす黒死病、天然痘も特徴的な化膿性の皮疹を生じ、命を落とすのですから、恐ろしさは想像を絶します。
 
奈良東大寺の大仏も天然痘の平癒を祈願して作られ、ウィーン(オーストリア)にはペスト記念塔が建てられたのも願いを象徴していると思われます。
 
 
ところが、天然痘は人に限って感染することと種痘によるワクチン効果が高かったことから、根絶することに成功したのです。
1977年以来、感染者がないことを受けて世界保健機関(WHO)は1980年5月に地球上からの天然痘根絶宣言を出したのです。
 
人類は感染症と向き合ってきましたが、病原体の発見、ワクチンの開発という成功の鍵も、ようやく手に入れてきたのです。
現在も、新型コロナウイルス感染への厳しい状況に犠牲を払っていますが、ワクチンが救ってくれる日が来ることを心待ちにしています。

(つづく)

 


■講師ご紹介

安達先生

相模女子大学 栄養科学部長 教授

安達 修一 先生

専門分野は環境保健学。医学博士。埼玉医科大学医学部助手、講師、助教授を経て平成13年4月より現職。日本衛生学会、大気環境学会、日本癌学会等、多数の学会へ所属。環境省 微小粒子状物質環境基準の制定に携わる。
 
 

■安達修一先生コラム一覧

1.病原体と空気

2.空気で運ばれる病原体

3.呼吸器の防御の仕組みと感染の予防

 
 
 

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