Column
空気と換気のコラム

坂本 雄三 先生

1.コロナ禍による換気の再認識 その①:コロナ禍と対策レビュー

2022/06/02

コロナ禍と対策レビュー

 

 日本で最初のCOVID-19感染者が確認されたのは2020年1月ですから、コロナ禍は3年目に突入しています。最有力の対策と目されたワクチンも開発され、世界で広く接種されています。にもかかわらず、コロナ禍はなかなか終息するようには見えません。
 
 今回のコロナ禍においては、当初はワクチンも存在しない状況ですから、人から人へ空気感染あるいは接触感染する機会を減らしたり、遮断したりする対策が進められました。「三密の回避」(三密とは「密閉」、「密集」、「密接」のことで、「密閉」を回避する手段が「換気」。)がこのような対策のことです(図1参照)。その結果、換気の重要性が再認識されるようになりました。マスクの着用や手洗い・消毒の励行も同様に再認識されました。しかし、これらの対策・手段はどれも決定的な対策・手段とは言えません。換気について言えば、室内のコロナウィルス濃度を薄めて、感染リスクを低下させるのが役目ですので、所詮、「縁の下で頑張る」的な存在なのです。


[Sakamoto-1]図1
図1 三密回避のポスター(出典:首相官邸HP)

 
 今回のコロナ禍は、第一次世界大戦中に世界で猖獗しょうけつしたスペイン風邪によく(たと)えられます。ウィキペディアによると、スペイン風邪は1918~1920年に流行し、その3年間の延べ感染者は5億人、死者は5千万~1億人以上と記載されています。一方コロナは、グーグルによりますと、2022年5月5日時点で、世界の延べ感染者は5.16億人、死者は624万人です。ですから、感染者は同程度ですが、死者が1桁少ないことが分かります。死者が大幅に少ない要因は、この1世紀の間における医療の向上とワクチン接種(重篤化も防ぐ)であると推測されます。
 
 ところで、東京都のホームページを見ますと、コロナの報告日別陽性者数(新規感染者数と解釈できる)の推移(図2参照)とワクチン接種率の推移(図3参照)が掲載されていますので、両者を比較してみます。2回目の接種率が約75%に達する2021年12月以降、オミクロン株が流行し、陽性者は10数人/日のレベルから2022年2月には2万人/日以上のレベルにまで達します。勿論、この間ワクチン接種率は80%弱のままです。ですから、単純に解釈すると、陽性者数とワクチン接種率の間に相関は全く存在しなくて、「ワクチンは陽性者数の減少には全く効果がない」という結論に至ります。しかし、ワクチンは、臨床試験や疫学研究によって、既に発症予防効果が統計学的にも確かめられているのです。ですから、ワクチン接種率がもっと低くて40%以下だったら、2月の陽性者数は4万人/日以上だったかもしれないという仮説もありえます。その反対に、東京都の人口は約1400万人ですから、4万人はわずか0.286%にしか相当せず、「2万人だ、4万人だ」といっても誤差範囲であり、意味のない差で論議するのは無駄だという説も可能かもしれません。
 

[Sakamoto-1]図2
図2 東京都におけるCOVID-19の報告日別陽性者数の推移(2022年5月5日まで)
出典:東京都HP

 

[Sakamoto-1]図3
図3 東京都におけるコロナワクチン接種率の推移(2022年5月5日まで)
出典:東京都HP


 
 感染力が強い(反対に致死率は低い)変異株が登場すると、感染は「ロックダウンなどの強力な手を尽くしても」急拡大しますが、その変異株も数か月経過すると、感染力は次第に衰え(衰えの理由はよくわからないが、生物としての「運命」みたいなものか?)、急激に感染は収束していきます。そしてまた、次の変異株や新たな種類のウィルスが登場するまでは、やや平穏な日々が訪れます。
 
 以上のように考えると、今回のコロナ禍で対策と見なされたワクチン・マスク・換気・多人数食事会の禁止などはどう評価されるべきなのでしょうか?残念ながら、筆者は感染症やウィルスの専門家ではないし、専門領域に属する換気についても、第一線を退いているので今回のコロナ禍に関連したデータを有してはいません。ですから、専門的なコメントや提案は差し控えます。第一線の専門家の方々に、対策としてのレビュー(評価と再検討)をしっかり行ってくださいと、エールを送るだけです。そして、その結果を記録として忘れずに残し、次に襲来するかもしれないパンデミックに備えるべきなのです。

 

(つづく)

 
 


■講師ご紹介

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東京大学名誉教授

坂本 雄三 先生

専門は建築環境工学。1948年、札幌市生まれ。北海道大学卒業後、東京大学大学院博士課程を修了。建設省建築研究所・研究員、名古屋大学・助教授、東京大学・助教授を経て、1997年に東京大学・教授に就任。2012年に東京大学を退職し、国立研究開発法人・建築研究所・理事長に就任、2017年まで勤める。国土交通省、経済産業省、東京都などにおける審議会や委員会の委員を歴任。中でも、建築・住宅の省エネルギー基準の制定やZEH・ZEBのオーソライズにおいては委員長を務め、それらの成立に尽力した。また、空気調和・衛生工学会の会長も2010年から2年間務めた。主な著書として、『省エネ・温暖化対策の処方箋』(日経BP企画,2006)、『建築熱環境』(東京大学出版会,2011)。
 
 

■坂本雄三先生コラム一覧

1.コロナ禍による換気の再認識 その①:コロナ禍と対策レビュー

2.コロナ禍による換気の再認識 その②:換気の効用と役割

 

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