Column
空気と換気のコラム

安達 修一 先生(ウイルスと健康のおはなし)

4.良い換気で感染を予防

2020/12/24

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レジオネラ感染症例

 
 前回は呼吸器に感染症予防の仕組みがあることをお話ししましたが、その防御バリアを超えて、健康を害した例があります。
 1976年7月21日から3日間、アメリカのペンシルベニア州フィラデルフィアのホテルで在郷軍人(legionnaire)大会が開催されました。2,000人余りの参加者とホテル周辺住民から原因不明の肺炎が多発し、38人が死亡しました。これは在郷軍人病と名付けられ、新しい肺炎原因菌 Legionella pneumophila (レジオネラ・ニューモフィラ) が発見されました。この菌は土壌中など環境中に存在しますが、肺炎の原因として認識されていませんでした。
 これは夏の暑い日に多数の参加者でホテルのエアコンがフル稼働し、ダクト内でこの菌が増殖、噴霧されたためであることが分かりました。
 
 実は、その後、日本でもこの菌による肺炎が発生していますが、日本では、循環式の温泉施設など、温水中でこの菌が増殖していたのです。調べてみると噴水や空調用冷却塔などで、この菌の増殖が見つかって、現在では対策が取られています。
 
 アメリカではエアコン、日本では温泉と違いはあるものの、人工的な環境が要因になっているといえます。
 
 

換気の重要性

 
 一方、人工的に高度に清浄な空気環境が作られている例として外科手術室、半導体など精密電子機器製造のクリーンルーム、最近では、食品製造の現場も無菌環境が保たれています。
 
 話題になっているように人間自体が病原体のほか微粒子を排出するので、それを排除するためには、天井から床面に向けた層流(ラミナーフロー)にする方法がありますが、莫大な費用がかかってしまいます。
 
 新型コロナウイルス感染を防ぐには、密閉、密接、密集を避けることが呼びかけられていますが、いずれも
 
仮に感染者がいた場合に排出された病原体が他の人に吸入されないようにすることへの対策
 
です。
 
 空気側から見ると、同じ空間でかき混ぜられる状態が最もリスクが高いと言えるでしょう。
 在郷軍人病(レジオネラ肺炎)やダイヤモンドプリンセス号での新型コロナウイルス肺炎も、同じ空間での拡がりの例と言えます。
 映画館は新型コロナウイルス感染のリスクが高いと見られていましたが、これまでに集団発生(クラスター)がなく、その理由として法律に基づいた換気(CO2濃度が0.1%を超えないこと)が義務化されていることが考えられます。
 
 したがって、感染を防ぐには 換気が重要な要素 となります。
 
 暑い季節、寒い季節あるいは雨や風の時には、自然換気も怠りがちになりますが、単に窓や扉を開放するだけでなく、
 
 空気の流れを作る換気 によって、
 
 エアロゾル感染と認識されだした新型コロナウイルス感染症の予防に役立つことを知って頂けたら幸いです。

(おわり)
 
 
 


■講師ご紹介

安達先生

相模女子大学 栄養科学部長 教授 医学博士

安達 修一 先生

専門分野は環境保健学。医学博士。埼玉医科大学医学部助手、講師、助教授を経て平成13年4月より現職。日本衛生学会、大気環境学会、日本癌学会等、多数の学会へ所属。環境省 微小粒子状物質環境基準の制定に携わる。
 
 

■安達修一先生コラム一覧

1.病原体と空気

2.空気で運ばれる病原体

3.呼吸器の防御の仕組みと感染の予防

 
 

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