Column
空気と換気のコラム

安達 修一 先生(ウイルスと健康のおはなし)

3.呼吸器の防御の仕組みと感染の予防

2020/09/23

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呼吸器の働き

 
 今、私たちはマスクが欠かせない生活を送っています。マスクが感染の予防に役立つのか、役立たないのかという議論、諸説ありましたが、世界中でマスクを必要としている状況です。
 
 空気の中には、病原体を含め微生物が存在していますが、私たちの呼吸器は、消化管のように一方通行ではなく、行ったり来たりを繰り返しています。1日に20,000L(20m3 )の空気を吸っていると言われますから、細菌やウイルスも肺に入り込んでしまいます。
 鼻または口から空気を取り入れ、咽頭・喉頭を経て気管に入り、気管支が枝分かれして、末梢(終末)気管支、肺胞に達して、ようやく呼吸機能(ガス交換)が果たせます。気管支の分岐回数は20回以上にも及び、2の20乗ですから100万を超える空気の通り道に分かれることで面積も拡がり、ガス交換の場になる肺胞域の表面積の合計は70~80m2 と、3LDKのマンション床面積ほどにもなります。(図 参照)
 


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肺への異物の侵入や感染から守る仕組み

 
 誕生から生涯休むことなく呼吸を続けるため、空気中の粒子も肺の中に入り込んでしまいますが、まずは、鼻から入った空気は鼻腔内で速度が落ちるために、大きめの粒子(10~100ミクロン)は捉えられます(沈降)。
 スギ花粉は30ミクロンなので、多くは鼻腔内に沈着するため鼻炎を発症しやすいと言えます。
 
 より小さな粒子は、気管・気管支を通り肺胞にまで達する可能性はありますが、肺の奥へ行くほど湿度が高いため粒子は水分を含んで大きくなって沈着し、また、気管支分岐部には粒子が衝突しやすく沈着します。
 
 これら気管、気管支に沈着した粒子は、粘液線毛系といわれるエスカレータによって、肺の奥から口に向かって沈着した粒子を早ければ数時間、遅くても24時間以内に運び、痰となり吐き出すか、消化管へと運ばれるため、肺胞に達するのは1ミクロン程の小さな粒子の一部です。
 また、肺胞には異物を飲み込んでしまうマクロファージ(食細胞)がいて、病原体を不活性化する働きもします。さらに、肺組織の細胞が持つ免疫機能も役割を果たしています。
 
 これら仕組みは、肺という外界にさらけ出された臓器を感染から守ってくれています。


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 COPD(慢性閉塞性呼吸器疾患)という肺気腫など、喫煙によって肺組織が破壊された状態では、防御機能が働かないために肺炎に罹りやすく、重症化しやすいのです。
 また、免疫不全になると肺にカビが増殖する肺アスペルギルス症、エイズ末期の疾患であるカリニ肺炎など、健康な人では罹らない病気も起こってしまいます。
 

(つづく)

 


■講師ご紹介

安達先生

相模女子大学 栄養科学部長 教授 医学博士

安達 修一 先生

専門分野は環境保健学。医学博士。埼玉医科大学医学部助手、講師、助教授を経て平成13年4月より現職。日本衛生学会、大気環境学会、日本癌学会等、多数の学会へ所属。環境省 微小粒子状物質環境基準の制定に携わる。
 
 

■安達修一先生コラム一覧

1.病原体と空気

2.空気で運ばれる病原体

3.呼吸器の防御の仕組みと感染の予防

 
 
 

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