Column
空気と換気のコラム

丸谷 博男 先生

1.空気質と健康

2018/07/24

この連載は、空気と水の話から「健康な住宅建築と室内環境を形成して行く」一連のお話となります。
一歩一歩の探求をご期待ください。

 
重さを感じたことのない空気
どこまでも遠くが見える 無色透明な物体
月でも星でも見えるなんて 不思議な不思議な透明体
空気は動くと風になる
その風もユックリだと心地良いけど 台風の時には怖いくらい強くなる
動かない空気も 自分が動くと凄い抵抗力になる
だから 新幹線や飛行機は先が尖った流線型になっている 
空気はとっても欲張りな 運び屋さん
匂いも 水蒸気も抱え込む
砂埃や花粉、 PM2.5、放射能物質でもなんでも抱え込んでしまう
空気はやっぱり不思議な存在

 

■シックハウスを作ってきた歴史に反省

 建築を設計し始めてから、45年になろうとしています。前回の東京オリンピック後の好景気を背景に、今日まで粗製乱造の住宅建設が展開されてきたのではないでしょうか。
 
 一時暴走しすぎて、シックハウスが社会問題となり、フォースター建材が製造販売されるようになりました。その結果2003年の7月にシックハウス対策に係る法令等が施行されました。その基本的な内容はホルムアルデヒドに代表される13化学物質の基準値を設定し、それをクリアしている建材の表示と使用、クロルピリホスの使用禁止、そして室内換気の義務付けでした。
 

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出典:国土交通省 改正建築基準法に基づ くシックハウス対策
 
  
 しかし、移動家具については規制がなく、テレビ置台一つ家の中に置いただけで一変に室内環境が悪くなってしまう危険性が常にある状態です。また基準値とされているものは、一度アレルギーを発症した人間にとってはほとんど意味がなく、少量のホルムアルデヒド発生でも反応してしまうのが明らかとなっています。
 
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出典:国土交通省 改正建築基準法に基づ くシックハウス対策

 
 換気についても、問題だらけです。居室の内容積を計算し、それを換気扇の風量で割って、時間当たりの換気量を推し量っているのですが、実際はそのように都合よく換気されるわけではなく、もっとも抵抗の少ない部分に空気の通り道ができてしまい、隅々の空気が換気されていないのが実際です。ユニットバス内での換気を見れば明らかです。隅々では通風がないためにカビが発生しているのです。
 
 もう一方では、住宅の気密化が叫ばれて、結露防止、熱橋防止が施工者の関心事となっています。ところが、気密化された室内では、換気が悪く、空気質に課題が増えてきています。構造用合板で外側を包み込んでしまった耐震工法はこれをさらに悪化させている原因ともなっています。 
 
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出典:国土交通省 改正建築基準法に基づ くシックハウス対策

  
 健康面からは、高気密高断熱工法による「高性能住宅」の出現により、建材からの規制対象化学物質の放散量が基準値であれば良いというわけにもいかなくなってきています。また、化学物質の複合作用、総量規制についても特に留意点が謳われているわけでもありません。また、日本のシックハウス規制では13化学物質が規制対象となっていましたが、それ以外の化学物質でも 世界保健機関 (World Health Organization: WHO) では規制対象化学物質となっているものもあり、課題は山積みとなっています。 
 
 その結果、2017年に新たに指針値が設定された化学物質がありました。水性塗料の溶剤に使われている「テキサノール」や、接着剤や塗料に含まれる「2-エチル-1-ヘキサノール」などです。テキサノールは、既に指針値のあるフタル酸エステル類の代わりに広く使われています。2-エチル-1-ヘキサノールはオフィスなどのビニール製の床材から放散され、問題になることが多かったものです。同時に、キシレン、エチルベンゼンなど4物質については、既に定めていた指針値を改定し、規制を強化することになりました。
 
 13物質の指針値が設定されて以降、建築業界などは使用を控え、これらの化学物質が指針値を超え検出されることは少なくなりました。一方で、代替として使われているテキサノールなどがシックハウス問題を引き起こすケースが報告され、規制が必要と判断され今回の改正となったのです。 
 
 一人の住まい手にとっては、常に現在の問題です。今後の課題と言っていられないのもシックハウス問題の重要な点なのです。結局自衛するしかないということになります。 

 人間の健康には、酸素を体内に取り入れて二酸化炭素を排出するという呼吸作用が生命の原点となっています。ところが、部屋を締め切っているとすぐに二酸化炭素濃度が上昇し、酸素不足となってしまいます。建築衛生法では、二酸化炭素濃度は1000ppm以下となっています。私の身の回りの環境でも、1000ppmを超えることは珍しくありません。自宅のリビングでも仕事場でも油断するとすぐに1000~1600ppmになってしまいます。 如何に換気が日常的に必要かを痛感させられます。温湿度計だけではなくCO2メーターも身近で使うようにしましょう。
 
 生活を科学すること、これが健康を勝ち取る原点です。
 

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出典:国土交通省 改正建築基準法に基づ くシックハウス対策

 
(つづく)
 
 


■講師ご紹介

丸谷先生

一般社団法人エコハウス研究会 代表理事・建築家
専門学校ICSカレッジオブアーツ校長(創立55年)

丸谷 博男 先生

パッシブデザイン住宅、エコハウスの第一人者として、自然環境・人工環境にあった地域の伝統的な工夫や工法と併せて、現代技術と様々な知見を採り入れた「そらどまの家」を提唱しています。
 
 

■丸谷博男先生コラム一覧

1.空気質と健康

2.湿気と健康

3.高気密高断熱住宅の落とし穴

4.住まいの壁体内と室内の健康、そして気密・透湿・透気をつくる

5.設備を活用して空気質をコントロールする仕組み

6.換気とはなんだろう

 
 

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