Column
空気と換気のコラム

福島 明 先生

1.空気環境の安全性

2016/08/03

住宅換気を理解いただくために、二つのクイズを用意しました。〇か×か、考えてみてください。
 
第一問 換気の目的は汚い空気を排出することである
第二問 換気量は一定でなければならない
 
 室内の空気環境の安全から見た換気にとって、大切なことはなんでしょうか?気密化住宅を建てたときに換気を計画的にするということを計画換気という言葉で表現しました。計画換気というと「一定の換気量と計画した換気経路が維持されること」、という意見がありますが、本来求められているのは、居住者が理解し日常の生活の中で確実に換気が行われることです。もう一度計画換気の意味を考えて見ます。

■必要な換気を確保するということ

 必要な換気とは何でしょうか?外気条件による換気量の変動が小さいことや、一定の換気量が考えられた通りの空気の流れに沿って排気をされていることでしょうか?よく考えてみると住宅では、換気量が一定であることはほとんど意味がありません。時間帯により人間の数は異なり、調理をしたり、ストーブを用いたり、運動したり、いろいろな生活があり、一日の中で汚染物資の発生量も大きく変化します。室温も違い、化学物質の発生量も時間により違うはずです。にもかかわらず一定換気量というのは、少々おかしい。私は一定換気量の必要は全くなく、とにかく止まらず、常時換気がされていることが一番大切だと思います。

■換気経路が維持されること

 換気経路が一定である必要は?全般換気では局所換気と異なり、室内の汚染が薄まれば良いので空気の流れは一定である必要はありません。ある時には反対向きに流れても良いのです。換気は汚れた空気を排出することではなく、室内の空気が汚れた空気にならないようにすることなのです。うまく新鮮空気が供給されていれば、出て行くところは何処でもいいのです。なんせ、出て行く空気はきれいでなければならないのですから。それから漏気とすき間換気には大きな考え方の違いがあります。計画換気では、換気経路が不明確なのですき間換気に頼るべきではないという意見がありますが、私はそうは思えません。すき間から入ってくる空気も換気として評価し、良好な換気をするのが住宅に求められる計画換気の姿だと思います。

■止めないこと、止まらないこと、任せないこと

 換気の安全性とはこの三つに尽きます。まず、換気量が増減することは問題ではなく、「止めないこと」が大事です。装置が動いている以上は、快適性への欲求から居住者が止める可能性は高く、特に機械騒音に対する不快感から止める可能性は否定できません。次に「止まらないこと」ですが、機械換気ではその保証はたいへん難しい。機械換気は知らない間に止まるのです。装置は動いていてもはじめから換気してない場合もあるし、汚れなどで風量が簡単に激減します。
 「任せないこと」というのは居住者が換気を意識することです。シックハウス新法にも機械換気装置が止まらないようにしなさいと書かれています。これは居住者にとり大きなお世話なのです。要は知らない間に換気をしなさいと。居住者はばかで換気を止めてしまうから、気付かないようにしなさいと言うのと同じです。私はそれよりは換気をきちんと認識してもらうことがとても大事なことで、窓を開けることが一番直接的で効果のある方法だとしたら、それを居住者が選択できるような建物を造る。つまり、窓を開けられるような計画をすることがとても大事だと思います。これは簡単ではありませんが。
 一番目の写真(写1)は換気装置が導入され始めた頃の設置例です。押し入れの中に本体が入っています。当初は、保守のため必ず露出するように言っていたので、15年ぐらい前はこの様な装置が多く、今でも簡単に掃除ができます。


fukushima1-1
(写1)

 

 次の写真(写2)は、現在最も一般的な設置例で、天井裏に設置し点検口を設けています。維持管理の面からも、全般換気としては絶対避けるべきですが、残念ながらほとんどこの様になっています。天井の点検口を開け、無理な姿勢で掃除するのは大変ですよ。


fukushima1-2
(写2)

 
 さて、換気のクイズの答え、お分かりいただけましたか?
 
(つづく)
 

fukushima-profile

■福島明先生コラム一覧

1.空気環境の安全性

2.24時間換気装置は働いているか?-換気装置が働かない訳-

3.換気装置の維持管理

4.熱交換はお得か?

5.自然換気という選択

6.暖房・冷房と換気

 

※当コラムや画像等及びその内容に関する諸権利は、原則として株式会社トルネックスに帰属します。また、一部の画像・イラスト等の著作権は、原著作者が所有していますので、これらの無断使用、転載、二次利用を禁止いたします。

お問い合わせ

フォームが表示されるまでしばらくお待ち下さい。

恐れ入りますが、しばらくお待ちいただいてもフォームが表示されない場合は、こちらまでお問い合わせください。

トルネックスにお問い合わせ・資料請求・ご質問・ご相談は