Column
空気と換気のコラム
安達 修一 先生
4.PM2.5の影響を受けやすい人
2017/06/01
※音声が出ます。
子供の場合は老人と心配する部分が違って、例えば喘息は子供の罹患率が割と高い病気で、真菌などによって誘発されます。ハウスダストは喘息を発症する一つの要因であるのですが、ハウスダストをきれいにするよりも、きれいな外気を取り入れた方が本当はいいですね。きれいな空気を吸うことによって喘息等の症状を抑えられますが、外気がきれいかどうかは、住んでいる場所や気象等の影響を受けます。高齢者の方でも喘息はあるのですが、特に小児喘息の場合はPM2.5も悪影響を与えるということは良く知られています。
また、意外と日本人女性の肺がん増加が知られていないのですが、疫学的・統計的には日本人女性の肺がんのタイプで言うと、腺がんと言って肺の末梢に起こりやすいのです。男性の場合だとタバコを吸う方も多く、気管支や肺の入口に近いところに起こりやすいのですが、女性の肺腺がんが増える背景としては、仮説ですが、脂肪の摂取が増えたためとも言われています。肺がんが増える要因というのは、外因という環境要因だけではなく、内因もあります。人間の食生活が影響する可能性もあり、緑黄色野菜を摂っている人は肺がんになりにくいと疫学的にはわかっています。
ほとんどの人にとって呼吸器は普段意識されない臓器かもしれません。PM2.5と言うのは健康な方にとってはそんなに影響がないと思って安心していいと思います。しかし、持病があったり、体調が悪かったり、呼吸器疾患があったりすると、PM2.5を吸い込むことで悪化します。あるいはあまり知られてはいなかったのですが、循環器疾患にも影響があります。高齢になれば循環器の問題を抱えている方はたくさんおられるので、PM2.5を吸うことによって、増悪、悪化する、状態が悪くなります。悪化すると極端な場合は、もっと重症になり入院しないといけない可能性があります。
PM2.5はより健康にいるためのひとつの目安であると思います。PM2.5は、ずっと吸い続けることで肺がんとの関係もあると言われていますが、それよりは短期的な急性な問題として、呼吸器を健全に、体調を良く保つために、PM2.5を吸わないほうがいいですよという指標になっています。
(つづく)
相模女子大学 栄養科学部長 教授
専門分野は環境保健学。医学博士。埼玉医科大学医学部助手、講師、助教授を経て平成13年4月より現職。日本衛生学会、大気環境学会、日本癌学会等、多数の学会へ所属。環境省 微小粒子状物質環境基準の制定に携わる。
■安達修一先生コラム一覧
※当コラムや画像等及びその内容に関する諸権利は、原則として株式会社トルネックスに帰属します。また、一部の画像・イラスト等の著作権は、原著作者が所有していますので、これらの無断使用、転載、二次利用を禁止いたします。
お問い合わせ
フォームが表示されるまでしばらくお待ち下さい。
恐れ入りますが、しばらくお待ちいただいてもフォームが表示されない場合は、こちらまでお問い合わせください。
- 坂本 雄三先生コラム
- ウィズコロナの時代、家づくりにおける注意点
-
2022.08.18
6.これから(ウィズコロナ時代)の空調・換気システム その②:YUCACOシステム -
2022.08.03
5.これから(ウィズコロナ時代)の空調・換気システム その①:全館空調のための「序論」 -
2022.07.14
4.空調・換気の目標(室内環境基準)その②:空調・換気の目標を達成するための技術と手段 -
2022.06.30
3.空調・換気の目標(室内環境基準)その①:法令で定めた空調・換気の目標 -
2022.06.17
2.コロナ禍による換気の再認識 その②:換気の効用と役割 -
2022.06.02
1.コロナ禍による換気の再認識 その①:コロナ禍と対策レビュー
- 鍵 直樹 先生コラム
- ウィズコロナ時代に備えるための室内空気環境とは
-
2022.04.22
6.空気清浄機のフィルタの有効性について その② -
2022.04.08
5.空気清浄機のフィルタの有効性について その① -
2022.03.25
4.対策方法について その② -
2022.03.15
3.対策方法について その① -
2022.01.28
2.室内空気質と新型コロナウイルス感染症について その② -
2022.01.14
1.室内空気質と新型コロナウイルス感染症について その①
- 安達 修一 先生コラム
- ウイルスと健康のおはなし
-
2020.12.24
4.良い換気で感染を予防 -
2020.09.23
3.呼吸器の防御の仕組みと感染の予防 -
2020.08.27
2.空気で運ばれる病原体 -
2020.08.06
1.病原体と空気 - PM2.5による健康被害について
-
2017.07.26
6.健康に暮らすための空気の重要性 -
2017.06.29
5.PM2.5等の大気汚染から身を守るために -
2017.06.01
4.PM2.5の影響を受けやすい人 -
2017.05.11
3.PM2.5による健康影響 -
2017.04.25
2.PM2.5は呼吸で全身に侵入 -
2017.03.31
1.大気汚染はいつどこで起こるの?
- 矢口 貴志 先生コラム
- お家に潜む、見えないカビと健康のお話
-
2020.06.08
6.カビを増やさないための対策方法 その② -
2020.03.16
5.カビを増やさないための対策方法 その① -
2020.01.28
4.カビが原因で起こる健康影響や生活への影響 その② -
2019.12.16
3.カビが原因で起こる健康影響や生活への影響 その① -
2019.11.27
2.カビの基礎知識 その②:こんなところにもカビ? -
2019.11.08
1.カビの基礎知識 その①:カビってなんだろう?
- 丸谷 博男 先生コラム
- 健康と快適の素「空気と水」
-
2019.03.11
6.換気とはなんだろう -
2018.12.28
5.設備を活用して空気質をコントロールする仕組み -
2018.10.11
4.住まいの壁体内と室内の健康、そして気密・透湿・透気をつくる -
2018.08.23
3.高気密高断熱住宅の落とし穴 -
2018.08.09
2.湿気と健康 -
2018.07.24
1.空気質と健康
- 南 雄三 先生コラム
- 正しい換気と空気の関係
-
2015.02.26
6.換気はメンテが命 -
2015.02.10
5.必要な換気量 -
2015.01.21
4.必要な気密性 -
2015.01.07
3.計画換気の原則 -
2014.12.17
2.換気の目的と気密 -
2014.11.26
1.空気がきれいなのは内・外どっち?
- 井上 浩義 先生コラム
- ここまでわかったPM2.5 本当の恐怖
-
2015.06.01
6.PM2.5時事解説 -
2015.05.12
5.PM2.5から身を守るために(マスクのような繊維状フィルタの効果は?) -
2015.04.28
4.地域で異なる発生源 -
2015.04.28
3.PM2.5の発生メカニズム、発生状況(今後も続くPM2.5) -
2015.04.02
2.PM2.5による健康被害について -
2015.03.17
1.大気汚染の歴史から現在の汚染状況
- 坂本 弘志 先生コラム
- 快適な室内環境を実現するには
-
2016.05.19
6.外気清浄機を有する第2種換気の実現に当たっては -
2016.04.07
5.第3種換気で知っておきたいことは -
2016.03.15
4.第1種換気で知っておきたいことは -
2016.03.01
3.シックハウス問題は解決したか -
2016.02.16
2.VOCの測定から見た室内空気環境は -
2016.02.03
1.現在の換気設備が抱える問題点とは
- 福島 明 先生コラム
- 換気システムの課題とこれからの住宅換気
-
2017.11.28
6.暖房・冷房と換気 -
2017.09.07
5.自然換気という選択 -
2017.08.09
4.熱交換はお得か? -
2017.01.26
3.換気装置の維持管理 -
2016.11.28
2.24時間換気装置は働いているか?-換気装置が働かない訳- -
2016.08.03
1.空気環境の安全性
- トルネックス技術部コラム
- 本当の空気清浄能力って?
-
2016.06.08
4.フィルタの捕集効率の表し方の違いについて -
2016.02.02
3.外気の取り入れに使うフィルタに必要なこと -
2015.09.25
2.一般的にはどんな種類のフィルタがあるの? -
2015.07.16
1.フィルタって何?
- カスタマーサービス部コラム
- 外気清浄機を長く安心して使っていただくために
-
2018.07.24
吸引力を維持するために必要なこと、フィルタはいつもキレイが鉄則