Column
空気と換気のコラム

矢口 貴志 先生

3.カビが原因で起こる健康影響や生活への影響 その①

2019/12/16

■皮膚など表面に起こす炎症

 カビによる健康被害として身近な病気として、水虫を思い浮かべます。白癬菌と呼ばれるカビが、皮膚の表皮(とくに角質層)、爪、毛髪などの表層にとどまり、皮下組織まで深く侵入しない皮膚表面の炎症です。
 

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 水疱ができたり、皮膚薄く皮が剥がれたり、時には角質が肥厚して硬くなります。角質層からさらに奥へと菌は侵入しようとしますが、健康な人には免疫がありますので侵入できませんが、炎症を起こしますため痒みを伴います。症状が足でれば水虫、陰部ではインキン、体ではタムシと場所によって病名が変わりますが、原因は白癬菌で、その種類は主なもので10種程度あります。
 
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写真提供:きさらづ皮膚科クリニック 高橋容子先生

 
 白癬菌は種類によって、人から人へと感染するヒト好性のものと、主として動物から動物への感染がみられる獣好性のものに分けられます。人から人への感染の場合、不特定多数の人が集まる温泉、銭湯、スポーツクラブなどで足ふきマットを介してうつることが多いです。また、家庭内でも水虫の人がいると他の家族に移る場合があります。
 
 ただし、菌が皮膚に侵入するには24時間程度はかかるといわれているため、菌が付いただけでは水虫にはなりません。24時間以内にきれいに洗い流せば感染しないのですが、入浴は1日に1度の場合が多いですね。最近、ネコなどのペットから飼い主への感染が増えているといわれていますが、動物から人に感染した場合、症状が悪化することが多いので注意が必要です。
 
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写真提供:きさらづ皮膚科クリニック 高橋容子先生

  
 水虫は治らない(完治しない)、繰り返すといわれることが多いようです。現在は、効果の高い薬がありますので、薬を適切に塗れば治ります。水虫の痒みがなくなったり、見た目がきれいになってしまうと、薬を塗るのを止めてしまう人が多いと思います。白癬菌は角質層だけにとどまっている場合、痒みは出ません。塗り薬をそこで止めてしまうと、また白癬菌が増えて症状が現れます。角質層が剥がれ入れ替わるまでの期間(約1ヶ月間)は、痒みがなくなっても薬を塗るようにしてください。

 

■カビを吸い込むことで起こる病気

1)アレルギー

 生活環境におけるカビの発生は、これまで主として梅雨時に限られていましたが、最近は、住宅建材にサッシが使用されることにより気密性が高まり、エアコン、加湿器の使用により冬でも高温、高湿度で、年間を通してカビが多く発生するようになってきました。
 
 生活環境中のカビは、主に埃の中に生息し、これらの胞子や菌糸の断片が空気中を浮遊し、人が1日に吸い込むカビの数は、約10,000個ともいわれています。
 

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 このことが、カビはダニ、花粉、ペットの毛垢などと並んで、喘息、気管支炎、過敏性肺臓炎など呼吸器領域のアレルギー疾患の原因とになると考えられています。
 
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 しかし、アレルゲンとなる菌種と抗原性との関係は明らかにされてはいません。花粉、ペットアレルギーの場合は、問診のみで原因アレルゲンを推定できることが多いですが、カビアレルギーにおいては、問診で原因となるカビを推定することは難しいです。
 現在、使用可能なアレルギー検査のためのカビアレルゲンも限られているため、多様な環境中のカビに十分対応できていません。
 カビを吸い込まない環境を作ることで症状が和らぐのは、花粉症と同じ原理になります。

 

(つづく)

 


■講師ご紹介

矢口貴志先生

千葉大学 真菌医学研究センター 准教授

矢口 貴志 先生

早稲田大学理工学部応用化学科卒業。明治製菓(株)を経て現千葉大学真菌医学研究センター准教授に就任。生活環境のカビ、特に病原性のカビを専門に研究。「世界一受けたい授業」「林修の今でしょ講座」などテレビ出演多数。
 
 

■矢口貴志先生コラム一覧

1.カビの基礎知識 その①:カビってなんだろう?

2.カビの基礎知識 その②:こんなところにもカビ?

3.カビが原因で起こる健康影響や生活への影響 その①

4.カビが原因で起こる健康影響や生活への影響 その②

5.カビを増やさないための対策方法 その①

6.カビを増やさないための対策方法 その②

 
 

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