空気と換気のコラム
2018/08/23 3.高気密高断熱住宅の落とし穴

この連載は、空気と水の話から「健康な住宅建築と室内環境を形成して行く」一連のお話となります。
一歩一歩の探求をご期待ください。

 
確かに隙間があると 湿気と熱が漏れてしまう
しかし日本では 壁や屋根を密閉したら 
空気が停滞して カビだらけになる
高断熱は 暑くもなく寒くもなく 快適なように思える
でも 夏、熱は室内に侵入していることは間違いないので その熱負荷をどうするのか
冬は、室内の熱が外へ流失しているので 燃料消費が無駄になっている
中間期には 窓を開けて暮らすので その時にはどうなるのか
冬には乾燥して風邪を引きやすい
乾燥肌で アトピーもひどくなる
空気も滞ってしまい いいような感じがしない
気密が良すぎると 玄関ドアを閉めた時に 耳に気圧を感じる
熱損失だけのためではなく 住みここちからの評価・技術も欲しい
専門家のための技術では困る 住みて向けの技術であって欲しい

 

■熱についての考察

 いわゆる断熱材だけの「断熱」では片手落ちと言えます。大雑把にいうと半分の熱流にしか有効ではないからです。
 
 発砲樹脂やグラスウール、セルロースファイバー、羊毛などの断熱材は空気を小さな部屋に閉じ込めて空気の「対流」による熱伝導を抑え、さらに熱を伝えやすいグラスウールの様な材料は、できる限り細く長くして「伝導」による熱伝導を遅らせています。つまり、「伝導」と「対流」に対して抵抗値を大きくしているのが断熱材の原理なのです。
 
 熱には、もう一つの伝達方式があります。それは、「放射」です。建築では同じ意味で「輻射」という言葉も使います。真夏に道路を歩いていると、気温よりも遥かに暑さを感じます。それは道路からの照り返し、つまり道路面からの輻射熱を受けているからなのです。道路面は50度以上あります。その熱が、空気を介さずに直接人体に熱を伝えるから暑く感じるのです。太陽から地球へ届く熱も同じです。中間の宇宙には熱を伝える媒体はありません。真空ですから。
 
 地球上では、この「熱の三態」が働いています。ですから、いわゆる断熱材だけの工夫では、片手落ちになるのです。高断熱高気密の住宅なのになぜ、ロフトが暑いのか不思議に思う人がいます。それは、いくら断熱しても、熱の入り方がゆっくりなだけではいらないわけではないのです。そして一度室内に入ってきたら、今度は高断熱のために熱が出る場所がないために、結果として暑くなってしまうからなのです。
 
 住宅は、人が室内で暮らしています。計算上で熱負荷が少なかったとしても、そのままで快適だとは言えない熱の原理がここにあります。
 

■放射熱に対する対策法

 では、放射熱に対してどの様に対処したら良いのでしょうか。そこで、次の様な実験(協力:日本インシュレーション株式会社研究部)をしてみました。図3-1を参照してください。
 


maruya3-1


maruya3-2
maruya3-2-2
図3-1 材料表面温度推移

  

■アルミは放射熱を反射する

 材料リストの中で、baubio- Nあるいは-Tというのは、日本インシュレーション社で製造している耐火被覆材ゾノトライト系ケイ酸カルシウム板のことです。また、⑧baubio-N +遮熱シートというのは、板の上に遮熱シート(ポリプロピレンのスペーサー4㎜厚の両面にアルミ箔を接着したもの)を被せたものです。
 
 この実験で明らかな様に、遮熱シートを載せたものは、放射熱を遮り、材料の温度上昇が大変低いままで維持しているという特徴を読み取ることができます。最近の窓ガラスにも、この効果を利用してガラスに金属膜を接着し、放射熱を遮っていうるものが普及しています。Lo-Eガラスというものがその例です。これらから知ることができるのは、金属膜が遮熱効果を持っているということです。その中でも特にアルミニウムの反射率が大きいことが理解できます。様々な材料の放射率を比較したものが図3-2です。


図3-2各種材料の放射率比較
図3-2

  
 放射率は、いわゆる自然素材系の材料である木、土、レンガなどは0.9以上の放射率を示し、放射熱をよく吸収し、また放射することがわかります。また金属は逆に、放射熱をあまり吸収せず反射してしまうこともわかります。特にアルミニウムの性能が特徴的です。この作用を活用する技術が建築関係では、「輻射効果」として普及し始めています。宇宙飛行士の宇宙服も、宇宙空間では断熱の意味がなく、放射を制御するためにアルミ箔が利用されています。みなさんが真夏に、自動車のハンドルが加熱して握れなくならないように、アルミを貼った折りたたみボードをかぶせているのも、アルミの反射性能を利用している事例です。これを住宅にも活用した方が良いのです。
 

■気密も大切

 図3-3をご覧ください。これはドイツ建築物理研究所のデーターです。1m×1m=1㎡の平面のたった1/1000の隙間があるだけで、室温20℃、外気温−10℃、温度差30℃の状態で、熱漏れが1.44-0.3=1.14 W/㎡Kもあり、完全気密状態の時の4.8倍の熱損失があるというのです。さらに、そのたった1㎜の隙間から壁体内に800g/hの湿気が流入し、結露と断熱性能低下の原因を招くということを実証しています。

 
maruya3-3
図3-3 気密の必要性とその効果

 
 さて、こうした物理現象を踏まえ、室内と壁体内の健康を守り、無駄な熱ロスをしないようにするにはどのようにしたら良いのでしょうか。さらに具体的にして行きましょう。
 
(つづく)
 
 
注:引用資料
  図―1 丸谷博男著「そらどまの家」萌文社刊より
  図―2 丸谷博男著「そらどま読本1―ZIGZAG HOUSE」萌文社刊より
  図―3 宇都正行・丸谷博男著「新そらどまの家」萌文社刊より
 
 


■講師ご紹介

丸谷先生

一般社団法人エコハウス研究会 代表理事・建築家
専門学校ICSカレッジオブアーツ校長(創立55年)

丸谷 博男 先生

パッシブデザイン住宅、エコハウスの第一人者として、自然環境・人工環境にあった地域の伝統的な工夫や工法と併せて、現代技術と様々な知見を採り入れた「そらどまの家」を提唱しています。
 
 

■丸谷博男先生コラム一覧

1.空気質と健康

2.湿気と健康

3.高気密高断熱住宅の落とし穴

4.住まいの壁体内と室内の健康、そして気密・透湿・透気をつくる

 
 

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